■ ストレスの正体「エンジンのふかしすぎ」
私たちは毎日ストレスと戦っています。
それなのに正体がよくつかめない「ストレス」。
ストレスを受けた時、体の中では何が起きているのでしょうか?
それが分かると、戦い方も見えてきそうです。
まずストレスの直接的な原因はご存知「活性酸素」です。
活性酸素は強い酸化力をもった成分で、主に4つの種類があります。
活性酸素はごくありふれた成分で、1 日に細胞あたり約10 億個発生し、一日数10 万個という大量のDNAが損傷を受けています。
なぜこんな危険な成分がごくありふれた成分のままなのでしょうか。
それは私たちの体が超高効率の酸化還元式エンジン(ミトコンドリア)で動いているからです。
体内に取り込んだ栄養(還元物質)を酸化(燃焼)させて動かすスーパーエンジンですが、副産物として大量の活性酸素を排出します。
しかし普段は抗酸化物質によって適切に処理されています。先ほどの損傷を受けたDNAもすぐに修復され、一定のバランスが保たれています。
ではどのような場合にバランスが崩れ、活性酸素がストレスの原因になってしまうのでしょうか。
すべては、危機を察知した「自律神経系」からはじまります。
私たちの体を貫く末梢神経には「体性神経系」と「自律神経系」があり、私たちがストレスに晒されると脳は「危険が迫っている」と判断し、私たちの意思とは無関係に「自律神経系」に指令を出します。
戦闘や逃走に備えてスーパーエンジンを最大出力にするためです。
私たちの意思と切り離された「自律神経系」に指令が出されるのは、私たちの判断を待っていると間に合わないと考えているからでしょう。
熱いものに触った時の反射運動に似ています。
具体的にはまず自律神経の一つ交感神経系を亢進させ、アドレナリンやコルチゾールを分泌し、心拍数・呼吸数・血圧・血糖値を上昇、血管・気管を拡張、筋力を増大させ、戦闘や逃走の準備が瞬時に整います。
その結果、私たちの体のエンジンが最大出力になり、普段よりも大量の活性酸素が作られます。
ここまでは危険を避けるためのやむを得ないストレス反応です。
活性酸素も無駄に作られているわけではなく、感染防御、代謝促進、シグナル伝達などの役割があります。
そして活性酸素が計画的に消費され、問題も解決できた場合はすがすがしささえ感じます。
これを私たちは成功、訓練、トレーニングなどと呼んでいます。
しかし無計画に発生する長期的ストレスは、活性酸素が余ることが多く、行き場を失った活性酸素は私たち自身の体、細胞、たんぱく質を攻撃します。
これがいわゆる「ストレス」の正体です。
■ ストレスとの戦い方「ビタミン」
私たちは余った活性酸素を分解するため(ストレスを発散するため)、つい、甘い物を食べ、アルコールを飲み、たばこを吸います。
私は甘い物しか食べませんので、特に甘いものに集中することになります。
が、ここが落とし穴です。
実は、
糖類やたばこはストレス解消に一切関与しないのです。
あたかもすっきりしたかのように感じるのは、糖類やたばこの禁断症状によるもので、実際に取り除くべき活性酸素を処理できたわけではないのです。むしろ増えてしまうデータまで確認されています。
しかも糖類は必須栄養素でもありません。
主食のように表現される糖類ですが、酸素と同じくらい手に入りやすく、しかも体内で生産可能な糖類はあまり気にする必要のない栄養素です。
おそらく長い歴史の中で、生活様式と食生活がズレてしまったのです。
ストレス解消のためにとらなければならない必須栄養素。
それは手に入りにくく、体内で作ることができない栄養素。
つまり、必須アミノ酸、必須脂肪酸、必須ビタミン、必須ミネラルです。
中でも必須ビタミンが活性酸素を取り除くためにもっとも必要な「活性還元物質」です。
ビタミンを毎日摂取すれば、ストレスが劇的に改善する場合が多いのはこのためです。
■ ビタミンを手に入れる「手段を選ばない」
私たちは毎日ビタミンに飢えている。
なのに毎日確実に摂取できているかどうか確認する人は多くありません。
しばしば、サプリメントに頼り過ぎてはいけないと言われますが、それはバランスのとれた新鮮な食事を「優先すべき」という程度に捉えるべきです。
私たちは毎日、ストレスだらけの都市へお金の狩猟に出かけています。
森の中に狩りへ出かけるとき、トラや毒蛇の脅威に対して十分に備えない人がいるでしょうか?
十分なビタミンを毎日取らずに都市へ出かけるなど、まさしく「八甲田山死の彷徨」です。
しかもビタミン摂取で気を付ける注意点はそれほど多くありません。
ビタミンの種類、効果、摂取上の注意点をまとめてみました。
太字が特に摂取したい活性酸素処理用ビタミンです。
摂りすぎに注意するのは3種類の脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,K)だけ。
そしてストレスに対して特に効果を発揮するのはビタミンC、ビタミンB群、ビタミンE。
これらストレス処理用ビタミンを多く含む食品をまとめてみました。
特に大豆は必須アミノ酸が豊富なだけでなく、水溶性、脂溶性ビタミンを両方同時に摂取できる優れた「サプリメント」です。
しかし天然の食材はビタミンの摂取量が確認できません。
摂取量の最終確認という点でサプリメントは現代社会に欠かせないとても便利なビタミン源です。
ビタミンCとビタミンB群はマルチビタミンとして摂取するのがもっとも効果的です。
それでも間に合わないほどストレスまみれの時には「ビタミンB群(Bコンプレックス)」を選びます。
脂溶性ビタミンに最適なのは「肝油」ですね。
古くから親しまれてきたサプリメントで、しかもおいしい。
食べすぎだけには注意です。
そして後は、ひたすら寝るだけ。
睡眠で大事なことは眠たくなる前に横になること。
寒気がした時はすでに風邪をひいています。
喉が渇いた時はすでに脱水症状です。
眠気を感じた時はもう疲労困憊状態。
「死にそうだ」と言いながら横になりましょう。
尾池(工学博士)
参考文献:
・Small Island Stress負荷がラットの血液流動性および活性酸素代謝産物に与える影響, 久光 直子ら, Journal of the Showa University Society 77(2), 156-161, 2017-04
・糖質制限食のすすめ・掲載11:糖質は必須栄養素ではない, 福田一典, ドクターからの健康アドバイス, http://www.daiwa-pharm.com/info/fukuda/7521/
・酸化ストレス, 片山善章, 生物試料分析 Vol. 32, No 4 (2009)
・酸化ストレスと健康, 江口裕伸, 生物試料分析 Vol. 32, No 4 (2009)
・ストレス反応とその脳内機構, 尾仲 達史, Folia Pharmacologica Japonica 126(3), 170-173, 2005-09-01
・活性酸素,過酸化脂質の生成と消去機構, 藤田 直ら, 日本薬理学雑誌, 99 巻, 6 号, p. 381-389, 1992
One thought on “ストレスの正体、ビタミンの威力”